2015年7月 のアーカイブ

手術についてのお話

2015年7月6日 月曜日

なんと!

随分ブログを更新していない自覚はありましたが前回の更新から2ヶ月も経ってしまっていますね。

自分でも呆れるくらいの筆不精ならぬブログ無精…もとい、たんなるサボり魔の院長小野寺です。こんばんは。

 

今回は大分増えてまいりました手術について、どのように行っているか書かせていただきたいと思います。

具体的には局所麻酔と全身麻酔について、お迎えに時間などについて書きたいのが本意です。

今回の記事はピックアップトピックスに載せるので長いですよ?

 

よろしくお願いいたします。

 

よくご相談として受けるものが

「歯の処置がしたいのだけれども年齢が高いので、麻酔すると死んじゃうと言われた」

「小さな皮膚の腫瘍を取るためにも安全のため全身麻酔は必須なので、高額になる」

「全身麻酔って、すると死んじゃうイメージがある」

などです。

 

当然ですが多くの飼主様は麻酔に関しての知識をお持ちではありません。

今回の記事で少しでも適正に嫌悪感を減らし、動物に最もメリットのある処置を選んでいただく一助になれば、と思っています。

以下に麻酔処置と手術について記していきますが、これはあくまで当院の場合のお話と思って下さい。よろしくお願いいたします。

 

そして重要なのははっきりとした定義です。

「リスクもはらむ(全身麻酔)処置は、現在のこの子の不利益を打ち消す価値のあるものなのか」

これは当然僕も念頭に置いて治療していますが、要はデメリットを一蹴するくらいメリットが大きいか否か、がとっっっっっても大切です!

 

さて、では書いていきますねー。

 

麻酔には大きく「全身麻酔」と「部分麻酔」があります。

全身麻酔とは動物の意識が消失した状態を維持し、手術後覚醒させるものです。

部分麻酔とは動物の意識はある状態を維持し、痛みのみを除去して手術を行うものです。

(部分麻酔には麻酔部位の大きさによって手技がいくつかありますが、全て「意識を保つ」ことが重要です。)

動物麻酔にはこの他に「鎮静麻酔」というものがあり、これはザックリ書くと「痛みは感じるけれど血圧が低くてだるくて動けない」状態にしてから手術を行うもので、少々攻撃的な動物の場合に多く提案します。もちろん痛みは感じていますので局所麻酔薬との併用が原則です。

 

 

●部分麻酔手術について

当院では基本的に体表の腫瘤(イボ)摘除の手術は局所麻酔によって行います。15cm位の腫瘤でも可能です。

液体窒素を用いた体表腫瘤の除去は行っていません。良性悪性の診断が非常につけにくくなるからです。

この他にも局所麻酔によって得られるメリットがデメリットを上回ると思われる場合には局所麻酔での手術をご提案させていただく場合があります。

例えば断指手術や口の中に出来たイボの除去、断尾手術は基本的に局所麻酔にて行います。

「歯の処置やお腹を開けたりしない手術はだいたい部分麻酔」と考えていただいて結構です。

 

ただ体表の腫瘤摘除であってもまぶたに出来た腫瘤摘除だけは鎮静もしくは全身麻酔下にて行うことが多いです。

急に動いて眼に針が刺さった場合、全身麻酔下での処置が必要になりますので。

(どうしても飼い主様が希望される場合にはその旨を確認していただいた上で行いますが…)

 

 

局所麻酔手術のメリットはなんといっても動物の意識を消失させないため手術後すぐに帰宅できること。

そのため局所麻酔手術後の引き取りは「午後の診療時間内であればいつでも」とお伝えしています。

午前12時にお預かりして午後3時半にお返しすることが可能です。

デメリットは局所麻酔薬であるキシロカインとブピバカインの副作用(飼主様が気づくようなものはほとんどありません。また、アレルギーに分類される副作用ですので起こした場合には院内での処置となります。)、並びに麻酔持続時間延長効果のあるエピネフリンに反応する可能性(エピネフリンとはアドレナリンのアメリカ表記です。活動的になったり血糖値が上がったりします。)があるということでしょうか。

今まで眼にしたことはありませんが。

(当院では手術後の気にし始める時間を少しでも長くするため局所麻酔薬は短時間型のキシロカインと中長期型のブピバカインを合剤として使用しています。)

 

痛みを伝えるのは神経です。この神経を局所麻酔薬で麻痺させ、その神経の支配領域全てを麻痺させる手技を上位神経麻酔、浸潤麻酔と言います。

先に書きました断指手術も手の甲に麻酔することで無痛で行えます。もちろん目の前にいる人や手を噛んでくる動物には使えませんが、四肢末梢の手術や体表の手術は部分麻酔が基本です。

 

 

●全身麻酔について

全身麻酔を行う手術はもちろん局所麻酔で行う手術よりも多く、局所麻酔手術に記載した手術以外は基本的に全身麻酔によって行います。

動物の意識がない状態で行うため拒絶の反応が一切なく様々な処置が行えます。動物は麻酔中の痛みを感じることなく、覚醒(目を覚ます事)ごに始めて感じます。ただ意識を奪う麻酔の場合、脳の機能の一部を停止させるわけですから色々な「その時起きなくても良い反応」が起きます。

具体的には血圧の低下と心拍数の低下に伴う低体温と血液循環不全、呼吸低下に伴なう低酸素です。

これらの対策として一般的なのは血圧が下がりにくくする薬の併用、心拍数が下がらないように麻酔状態を維持する、低体温にならないよう湯たんぽないしヒートカーペットを使用する、血液量を補うため術中に点滴を行う、低酸素にならないように酸素の供給を行い必要であれば陽圧換気(酸素を肺に送り込むこと)を行う…といったところでしょう。

当院では全て行いますし、やらない動物病院はまずないと思われます。

もちろん手術中の動物の心電図、心拍数、血圧、体温、呼吸状態は確認できるようにしておきます。

当院では全て行いますし、やらない動物病院はまずないと思われます。

 

具体的に記載したいと思います。

まず全身麻酔の準備として術前に麻酔がかけられる状態であるかの血液検査を行います。

若い動物であれば最小限の、老齢動物であれば十分網羅した検査をおすすめします。

最小限検査セットは5000円、院内健康診断セットは13000で可能です。健康診断セットをおすすめするのは7歳以上の犬猫です。

血液検査の異常と体温、呼吸の様子の異常がなければ基本的に手術は可能ですが場合によっては胸部レントゲン、心電図、超音波検査の必要が出てきます。これは症例によりまちまちです。

血液検査で問題がなければ基本的に全身麻酔は可能ですので手術当日の朝ごはんだけは抜いて連れてきていただきます。

連れてくる時間はいつでも構わないのですが動物にとって病院にいる時間はストレスを感じる時間に等しいと思っていますので、なるべく午前の診療時間終了ギリギリが望ましいですね。

 

手術時間になったら(当院では1時から、場合によっては12時から)動物には留置針という血管内に薬を入れやすくする管を入れます。

(猫の去勢ではしないことが多いです、場合によっては剃毛します)

その後、前処置と言って意識を奪う麻酔薬を効きやすく、また量を減らせられる薬を投与します。具体的には痛み止めと鎮静薬、心拍数低下予防の薬です。

その後本麻酔(基本的にはプロポフォール)を投与して意識の消失を確認した上で気管チューブ(滅菌済)を挿管し、人工呼吸を行います。

この後手術しやすい姿勢にし(保定といいます)、ヒートマットによって体温の低下を防ぎながら手術を行います。

もちろん動物の麻酔状態を確認し続けるために呼吸時の麻酔濃度、酸素飽和度(動物が低酸素、すなわち苦しい状態になっていないかの確認)、心拍数、血圧を経時的観測します(モニターする、とも言います)。

手術中は例外なく点滴を行います。(再三になりますが猫の去勢を除きます。)

手術部位が大きくなった場合には術後疼痛を和らげるために中長期型局所麻酔薬を手術部位に注射します。

 

この後、必要な手術を行い麻酔が切れて動物が頭をあげるようになった時点で飼い主さんへの電話報告を行います。

動物の覚醒が遅い場合には入院を勧める場合もあるかもしれません。

(開業から今までは一度もありませんが)

 

当院の去勢・避妊手術は基本的に日帰りです。

飼い主様のご希望であれば入院をする場合もありますが、僕は「動物は一日も安心できない場所に居たくはないはず」と思っていますので去勢・避妊等の手術の場合、基本的に日帰りをおすすめします。一番疲れた夜こそ安心できる場所でぐっすり寝て欲しいんですよね。

また、手術翌日の夕方になっても元気が無い場合には来院をお願いしています。

ああ、あとネコの去勢以外は縫合の糸があるためエリザベスカラーの使用をお願いしています。ネコの去勢でも手術部を舐められると化膿の可能性があるためお願いしています。ちなみにカラーは柔らかく動物のストレスになりにくいものを採用しています。基本的には四日ほど、舐めても傷が開かなくなるまでの使用ですがカラーは一応買い取っていいただきます。

 

手術後の抜糸は1周間から10日後の好きな時間にいらしてくださいとお願いしています。

抜糸でしたら20秒で終わりますし、料金はいただきませんので。

ただし2週間を過ぎると糸を伝ってきたばい菌によって化膿する可能性が高まりますのでご留意ください。

 

全身麻酔を行った動物は可能な限り直前まで様子を見たいので、午後6時以降のお迎えをお願いしています。

 

 

…と、こんなところでしょうか。

 

今回のブログが全身麻酔をかける動物の飼主さんの一助になれば幸いです。

 

中には「この動物は麻酔をかけると死ぬ」と言われている飼い主さんもいるようですし。(短頭種の飼い主さんに多い印象です。)

全身状態が悪く麻酔のリスクが著しく高い動物も中にはいますが、寝て覚めるので「麻酔」といいます。

覚めないことなどないように細心の注意をはらいます。

 

当院で全身麻酔下の処置及び手術を無闇にお勧めするつもりは毛頭ありませんが、

「本当に無理なのか」とお考えの方はご相談いただければと思います。

 

今日こんな感じのブログを更新したのは、ある飼い主さん(初診の方)が切実なお顔で「この子に一番ためになる治療をお願いします」とおっしゃったからです。

「僕は神様ではないのでする処置がいつもベストであると断言はできませんが、少なくとも僕がメリットが上回ると思う治療以外を提案することはありません。」とお伝えしました。

 

嘘にならないように勉強します(汗笑)。

 

ご相談があれば、メールでご連絡下さい。

 

小野寺動物病院 院長 小野寺史也