2019年8月 のアーカイブ

消費増税施行について

2019年8月30日 金曜日

少し過ごしやすくなったかなー、と思ったら今月初旬を思わせる熱気になったり…。

おまけに今日のような雨の日には不快指数が上がってしまいますね。

院長の小野寺です。おはようございます。

 

ついに大規模増税が10月1日から施行されます。

動物病院の場合、人の口に入る種類の販売はありませんので全項目が10%課税の対象です。

ですので10月1日より計算書の消費税がすべて10%となります。ご了承ください。

 

定期的にお薬の処方が必要な飼い主様におかれましては、増税前に受け取りに来ていただくのも一つの手段かもしれません。

 

よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也

 

歯石についてのまとめ

2019年8月17日 土曜日

何度か歯と歯石についてブログ更新をしてきましたが、ここいらで一度まとめておこうかなと思って本ブログを書くことにしました。

イヌやネコの口の臭い、気になりませんか?相手の口をなめる行為は強い親愛行動です。

途中でやめさせられると、おそらくですけど寂しい気持ちになるのではないでしょうか。

それでなくとも歯石の沈着は歯茎を押し上げ(歯槽膿漏)、場合により大きな膿瘍を形成したり(頬部歯根膿瘍)、強い鼻炎を引き起こしたり(口腔鼻腔瘻形成)します。顎の骨を溶かした結果、骨折する場合(脆弱性骨折)もあります。

歯石の沈着に伴う歯肉炎は犬・猫ともに非常に多く見られ、5歳の時点で約半数、10歳の時点で8割以上の動物に明確な歯肉炎が見られます。

ごく簡単に説明しますと、食べ物の糖類が口に残った状態で過ごしていると歯垢(歯牙細菌苔、プラーク)が形成されます。

この歯垢にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル類が反応し、固着したものが歯石です。

歯石は文字通り石の様に硬いため、ブラシや布類でこすっても剥がれることはまずありません。金属製の器具や超音波によって「割る・崩す」必要があります。

ですので歯石の沈着の予防にはまだ歯石化していない歯垢の時点で除去する必要があります。

 

それでは歯垢と歯石、歯周病、処置や治療について書いていくのですがかなり長くなる予定です。

ですので結論から先に書いておきます。詳しくお知りになりたい方は本文をご覧ください。

 

○動物が歯の掃除を嫌がる場合には決して無理をしない。動物が飼い主様に不信感を持つことは最大の不利益である。→必要だが嫌がられることは嫌われてもいい人がやれば良い。その代表は獣医師だと思われる。

○歯垢の段階を過ぎた歯石はブラッシングでは除去できない。→どれかの方法で歯石除去を行い、歯石沈着予防の処置が必要。

○物理的な歯垢除去以上に有効な歯石対策は残念ながら存在しない。→歯石を磨く行為は誰も幸せにしない。

○数度の咀嚼で飲み込むイヌやネコの場合でかつ食餌がフードの場合は歯垢は軟らかいため布などで拭うのみで十分。

○食肉目である犬猫の歯石沈着の速度は人の5倍以上である。歯石予防で重要なのは「たまにしっかり」ではなく「毎日優しく」である。

○毎日の歯の掃除で重要なのは「犬歯」「上顎第四前臼歯第一後臼歯」「上顎の最奥」「下顎第四前臼歯」である。

○食肉目である犬猫は歯を失ってもあまり困ることはない。

○歯石の治療には無麻酔歯石除去、鎮静下歯石除去、全身麻酔下歯石除去がある。

○抜歯は強い痛みを伴うため全身麻酔下での治療が望ましい。

ということです。

 

以下に説明を書いていきますねー。

 

歯石の対策を考える前に知っておかなければいけないことがあります。それは「動物の歯石対策は人の歯磨きとは違う」ということです。

イヌやネコの歯と人の歯は、そもそも目的から違います。

・イヌやネコの歯は人の歯のように「すり潰す」ための歯がなく、すべて「軟らかいものを噛みちぎる」ための互い違い歯である。

・イヌやネコの口はアルカリ性のため虫歯ができにくい代わりに歯石ができやすい。

・イヌやネコの舌は薄く筋肉が足りないため、水を飲む、舌なめずりをする以外の動きが基本的にできない。

…ということです。

 

人にも歯はありますし、犬猫にも歯はあります。そのためついつい同じ様に考えがちです。しかしここに種別の大きな相違点があります。

人にはものを剪断するための門歯(前歯)、肉を噛み切るための犬歯、あまり硬くないものを砕くための前臼歯、硬いものを噛み砕くための臼歯があります。

このように多種類の歯を持っている理由としては、僕たちの祖先が雑食であることが大きな要因です。果物、木の芽、小動物、木の実など栄養にできる雑多なものを食餌にしていたことが多用途な歯を持つ理由です。特に十分な咀嚼を必要とする硬いものを噛んでいたことで僕たちの口腔には酸に抵抗するためのアルカリを分泌する必要がなくなりました。

そのため酸性に傾いている口腔内では歯垢は歯石になりにくく、平均2週間程かかります。歯垢の中では細菌が活発に活動できますのでその間に細菌由来の酸が作られ歯の表面が溶けます。これがいわゆる虫歯(齲歯/うし)です。

一方肉食獣である犬猫の主食は肉や骨であり、消化を助けるために人にはない唾液腺を持っています。この唾液腺はアルカリ性であり、犬猫の口腔内をアルカリ性に保っています。酸は物を溶かし、アルカリは物に沈着します。このため犬猫には虫歯ができにくい代わりに速やかに歯石が沈着するのです。その速度は人の3倍とも5倍とも言われています。

 

近年、動物用フードが食餌の主流となり、犬猫の口腔内環境は劇的に変化しました。炭水化物が主体の食餌をすることで口腔内のpHはあまり変化することが無くなり、歯石の沈着速度が速まったのです。(これは人でも同じことが言え、人の口腔内は基本酸性ですので虫歯が増えました)

特にフードはビスケットやクッキーのような形状ですから一番奥の歯の後ろに留まってしまうのです。犬の舌は人のように器用にできていませんから口の周りを拭うことはできても歯の間にある異物を取ることはできません。

イヌの上顎第四前臼歯と第一後臼歯の頬側は他にこする歯もありません。また、中性大唾液腺である耳下腺とアルカリ性大唾液腺である頬骨腺の開口部がありますのでpHの変化を直接受けることになります。(これは下顎でも同様です。)

筋肉が少なく薄いイヌやネコの舌はでは口唇を拭うことはできても頬と歯の間を拭うことはできません。

ですので普段の歯石予防の場合重要なのは「犬歯」「上顎第四前臼歯第一後臼歯」「上顎の最奥」「下顎第四前臼歯」になります。他の小さな前臼歯は基本的に頬っておいて問題ありません。

ですので歯垢・歯石の沈着を防ぐ最大の手立ては「毎日食べかすを取り除くこと」になります。

 

これがなかなか大変で、特に猫は口腔内が狭いため人の指が入ると違和感が強くなかなか掃除させてくれません。

犬も「ちょ、おい、やめぇや」とばかりに嫌がります。これらの対策として歯磨きになれるために小さな頃から慣れさせることが非常に有用です。

もちろんなれていない子のほうが多いですので最初はおやつを指であげてみて、飼い主様の指を噛まないようになんとか食べようとするかを観察してください。

この時、指ごと持っていこうとする子には歯の掃除はちょっと難しいかもしれません。

僕のオススメは飼い主様が指に手ぬぐい(タオルはザラザラするため×)を巻きゆっくり優しくこすってあげる方法です。これで噛んだり起こったりするようでしたら危険ですし、動物も飼い主様に不信感を痛いてしまうので諦めましょう。

硬いプラスチックが当たることを嫌う子も多ければブラシが歯茎に当たることを嫌がる子も多く見られます。最初から歯ブラシを使用することはハードルが高いので気をつけてください。(もちろん慣れていれば全く問題ありません。)

 

しかしもう十分大人のこの場合、やらせてくれない子のほうが多いのではないでしょうか?

 

そんなときに有用な方法が「食べかすが口腔内に残らない食餌」と「歯垢・歯石除去」です。

 

先に書いたようにビスケットやクッキーのように水が加わると粘土状になる食事が歯石の沈着を助長させます。それならばしっかり飲み込める食餌にすれば必然口腔内に食べかすは残りませんよね?そんな食餌が「肉の給餌」です。噛んでいれば少量の食餌は歯に残りますが、ほとんどの犬猫はおいしい食事は丸呑みします。ゆえに、口腔内に残さずつるっと食べてくれます。そもそも噛まなくても飲み込める大きさに切って与えることができるのですからビスケット状にさえしていなければ問題は少なくなることは道理ですね。

噛んで遊ぶ玩具も歯石の除去には有用です。当院での診察で「おや?歯石除去したばかりなのかな?」というほどきれいな歯のワンちゃんの飼い主様に話を聞いてみたところ特定の玩具でよく遊ぶ以外に対策も予防もしていないとのことでした。この玩具は病院にありますのでご興味がありましたらお声掛けください。別に当院も安く仕入れているわけではなく楽天市場で購入してそのまま置いているだけですのでご自身でご購入いただいても全く問題ありません。ただ、ご購入の際は事故を避けるために少し大きめのものを選んでいただけると安全です。

よく牛の蹄を噛むおもちゃにされてらっしゃる飼い主様がいらっしゃいますが奥歯、特に第四前臼歯が削がれるように割れることがしばしば認められますので僕は決してオススメしません。

 

そして「溜まってしまった歯石をどうするか」という問題に対しては、

・怒らない子であれば無麻酔で歯石除去をする。当然歯周ポケットも掃除する。

・怒る子の場合、歯石除去の器具を噛むと歯が割れる危険があるため鎮静(意識を奪わない処置、麻酔よりも安全)下で歯石除去をする。

・抜歯の必要があるほど歯周病が進んでいる場合には全身麻酔下で抜歯処置と歯石除去をする。

という方法が対策です。

鎮静処置は「動く気が起きないくらいダルいけれど痛みは感じる」状態ですので、痛みをわざわざ与えることは獣医療の精神に反しますので局所麻酔との併用が必須です。オトガイ神経への局所浸潤麻酔と相性が非常に良いです。

 

以上をまとめると最初の「結論」になるのですが、結論の中でも最も大切なことがあります。それは

○動物が嫌がっている素振りをしたら決して無理をせず、獣医師に相談する。

ということです。動物にとっての最大の味方は飼い主様です。最大の味方が自分に嫌なことをするようになったらそのストレスたるやどれほどでしょうか。

「動物の健康にとって必要だが動物が嫌がる行為」は動物にとって「嫌われてもいい人間」がやればいいのです。その代表が獣医師です。

 

口腔内の様子を確認した上で、動物の気質も含め最適と考えられる治療方法を提案しますのでよろしければご相談ください。

動物が飼い主様の口を遠慮なく舐められるようにしてあげたいものです。

「相手の口を舐める」行為は最大限の親愛の表現方法ですので。

 

よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也