ノラネコちゃんの治療と手術について

2014年4月16日

ノミとダニなどの体表につく寄生虫のことを外部寄生虫というのですが、この話は長くなりますので次回にでも取り上げさせていただきます。今回は無飼い主動物(俗にいう野良犬・野良猫)についてです。

 

東京都都市部で野良犬を見かけることはまずないかと思いますので野良猫ちゃんの話を中心にさせていただきたいと思います。

 

皆さんは野良猫ちゃんたちに対してどのようなお考えをお持ちでしょうか?

・野良猫は病気の媒介となるので全て駆除すべきである。

・野良猫といえども命、出来る限りその生を全うさせるべきである・

・野良猫の幸せは願うべきであるが、今以上に同じ立場の動物を増やさないようにするため、避妊・去勢を積極的に行うべきである。

・強制的な不妊手術の実施は可哀想である。

・そもそも野良猫にした人間がいるのであればそのような人間に罰則を与えるべきだ。

…などなど様々な意見があるはずです。上記は以前に参加した意見交流会で実際に聞いたことを簡約させていただいたものです。

 

誤解しないでいただきたいことは、上記の意見はすべて「正しい」ということです。

小動物が嫌い・もしくはその害を著しく受けていらっしゃる方は強い減少方法を望まれますし、

そうでない方は動物の負担になりにくい方法を選ばれる事が多いですし、

動物の世話に幸福を感じていらっしゃる方は極力手を下さない方法を希望されるものです。

その全てはある意味正しいと思います。この理由は動物を飼っていない動物が嫌いな人、動物を飼っていないが動物が好きな人、動物を飼っているが無飼主動物が嫌いな人、動物を飼っており無飼い主動物も好きで幸せになって欲しい人…と立場が違う方たちの意見を同列に扱っているからです。

 

理想とする人と動物の共存関係にある社会とは何でしょうか?僕は以下のように考えます。

・動物が飼いたい人に対して、十分な知識を持つ人間がアドバイザーとして付き、適切な時期に適切なアドバイスを行うことが出来る。

・動物が苦手な人に対して、その苦手な原因が重要なものかを説明でき、嫌悪対象であっても自身の生活圏に侵入しない限り無害な関係が続くことを説明することが出来る。

・無飼い主動物の現状に対して正確な情報を把握しており、飼育動物との違いや及ぼし得る病害について適切なアドバイスを行うことが出来る。

・人道的な方法により無飼主動物の数の減少に貢献する。

ということです。

 

現実問題として無飼主動物は屋外で生活しています。繁殖は生物の正常な行動ですので増やせる機会があれば増えようとします。また、放棄という手段によって無飼主動物は増えます。飼育動物よりも過酷な環境にいる彼らの寿命は飼育動物に比べて明らかに短く半分から1/3位です。無飼主動物は自力で糊口を凌がなくてはいけませんから色々なものをいろいろな場所で食べます。

 

ここで僕の病院についてお話したいと思います。

 

当院の患者さんはほぼすべてが飼育動物であり、皆様思い思いに動物の健康に寄与する方法を実践されています。

 

これらの処置に際して、例えばノミやダニなどの外部寄生虫が感染している動物と飼い主様が飼っていらっしゃる飼育動物との接触を持つことは極力するべきでありません。

大きな病院であれば問題はないのだと思いますが、残念ながら当院の動物舎は2つ、手術室は1つです。どうしても完全隔離はできません。

今回このようなことを書かせていただいたのは中央区からの要請で傷病・無飼主動物の治療と、無飼主動物の中性化手術(避妊・去勢のこと)の協力病院にならないかとのお話をいただき、受任したからです。

このため当院が取ろうと思っている対策としては

・無飼主動物にはまず外部寄生虫駆虫薬を使用し、1日経過してから来院してもらう。

・処置の際に内部寄生虫薬を投与する。ただし虫卵は体にも付着している可能性があるので極力接触はさせないのはもちろん、消毒・清掃を心がける。

・手術後の個体は可能な限り飼育動物と隔離する。(第二入院室にも動物がいる場合は院長室=僕の寝室になります(笑))

 

僕の考えとしては

・無飼主動物は単なる「運」のみで無飼主動物になったのであって、飼育動物との間に治療の差があるべきではない。

・しかし現状無飼主動物はいなくなることなく増え続けており、人手が足らないことは明らかである。

・そもそも生まれて育ててもらった佃・月島地区の環境を良くする手伝いがしたい。

…ということで今後は無理の無い範囲で無飼主動物の治療を受け入れていきたいと思います。

 

一般の飼い主様方にはご不安やご心配をお掛けすることになり心苦しい限りですが、院内感染や事故が起こらないように尽力していきたいと思いますのでご理解いただきますようよろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 院長 小野寺史也