動物の中性化(避妊・去勢)のお話

2014年9月16日

半袖では肌寒く、もう一枚着ていると少し暑い。

長袖Tシャツやシャツ一枚でちょうどいい季節になってきました。

とても過ごしやすい気温ですね。小野寺動物病院の小野寺です。おはようございます。

 

 

気温が落ち着き、夏の間は控えていた避妊手術や去勢手術をお考えの飼い主様もいらっしゃるかと存じます。

今日はそれら中性化手術(性をなくす手術の意味で、メスの中性化手術=避妊手術・オスの中性化手術=去勢手術)について書いていこうと思います。

 

 

ではまずは結論です。(笑)長くなりますので。

 

●中性化手術は、繁殖の可能性がない動物において性関連トラブルの回避、性関連ストレスの低減に有用である。

●主なデメリットは麻酔による事故の危険性、手術による事故の危険性、性ホルモン欠乏による肥満傾向の発現である。

●最終的な判断は飼い主様に委ねられるが、「しない選択」をした場合には性関連トラブル(メスでは特に子宮蓄膿症と偽妊娠、

オスでは前立腺炎・付随する膀胱炎と会陰ヘルニア)を常に注意しておく必要がある。

 

…といったところでしょうか。普遍的な事柄を書いたので曖昧な表記、ややこしい文言になってしまっています。

 

以下に説明していきたいと思います。

 

その前に僕の基本姿勢について

●動物の寿命、特に健康寿命を延長することが最も大切である。

●飼い主様と動物とが楽しい豊かな時間を過ごすことが次いで大切である。

●基本的に飼い主様の意見を尊重するが、自身の知識・経験に基づいたことについては助言・提言をする。

 

このようなことを書くのは、中性化手術は動物のためにすることであり、決して飼主様のためだけや、ましてや病院のために

してもらうものではないからです。(病気の危険性が少なくなるという意味で病院のためでもありますが)

 

性関連トラブルや性ホルモンのストレスによる体内の変化が少なくなることで、寿命の延長効果が期待できるからお勧めしています。

 

全身麻酔について(詳しくは同じくピックアップトピックス「手術について」を御覧ください。)

・全身麻酔は数種類の薬剤を組み合わせて脳を麻酔下状態にすることで、無意識のうちに手術や処置を行うものです。

・全身麻酔を行う上で明らかな危険がないかは主に血液検査、レントゲン検査、心電図検査などで調べられます。

・若く健康な動物の場合、血液検査のみで手術の計画を立てる場合もあります。

・麻酔中は呼吸を管理し、同時に血中酸素飽和度、心拍数、血圧、体温などを測定することで動物の異常を素早く感知できるように気をつけます。

 

オスの中性化手術(去勢手術)について…精巣を摘出することで、精子の形成を永続的に阻害する手術です。

メリットとしては

・オス特有の病気になる確率が下がる。(精巣腫瘍、前立腺肥大症(犬)など)

・メスの発情への執着が少なくなる。

・繁殖を避けることが出来る。

・攻撃性の低下、マーキング、マウンティングの減少が期待できる。(全くなくなる場合はまれ)

※潜在精巣(袋に降りてきていない精巣)はちゃんとおりている物に比べ100倍腫瘍になりやすいです。若いうちに必ず!といった

手術ではありませんが、摘出を強くおすすめいたします。精巣腫瘍は組織学的には全て悪性ですので。

 

デメリットとしては

・ホルモンバランスが変化することで肥満になりやすくなる。

 

メスの中性化手術(避妊手術)について…卵巣単独もしくは卵巣と子宮両方を摘出することにより妊娠を回避する手術です。

 

メリットとしては

・メス特有の病気になる確率が下がる。(卵巣腫瘍、乳腺腫瘍、子宮蓄膿症など)

・発情のストレスが回避できる。

・発情時の出血が回避できる。(犬)

・偽妊娠によるストレス、乳汁漏出が無くなる。

デメリットとしては

・ホルモンバランスが変化することで肥満になりやすくなる。

・尿の持続失禁が見られる場合がある。(主に卵巣子宮両方を取った場合)

 

特に犬において、避妊手術の時期と乳腺良性腫瘍の発生は相関関係が認められています。

 

初回の発情の前に避妊手術を受けた場合の乳腺良性腫瘍の発生率は約0.5%、初回から2回めまでの間では約8%、2回目と3回目の間では約26%です。この結果に限って言えば手術は早いほど良いですし、子宮蓄膿症について言えばいずれの時期であっても手術したほうが発生する確率を減らすことが出来ます。

 

メスの中性化手術には卵巣摘出術(卵巣のみを摘出する)と子宮卵巣全摘出術(子宮と卵巣両方を摘出する)とがあります。

当院では主に卵巣のみを摘出する方法を推奨・実施しています。

 

メリットとしては

・術創(手術の傷)が小さく、痛みによるストレスが少ない。

・お腹の中に残す糸が最小限で済む。

・手術時間が短く、術中麻酔障害(麻酔時間が長いことによる体温の低下・神経障害など)が少なくて済む。

・術後合併症(手術後に見られる、手術に起因する障害のこと。尿失禁、腹腔内肉芽種の形成など)が少ない。

 

デメリットとしては

・将来的に免疫不全を起こす疾患(糖尿病・副腎疾患・免疫介在性疾患・猫白血病(猫)・猫エイズ(猫))になった場合、子宮蓄膿症になる可能性がある。

 

上記のメリット・デメリットを比較した時に、僕はメリットが上回っていると思いますので卵巣のみの摘出を推奨しています。

もちろんご希望であれば子宮と卵巣両方を摘出する手術も可能ですのでご相談いただければと思います。

 

 

さて、よく耳にするご意見として「自然のままの姿でいさせてあげたい。」というものがあります。

こちらももちろん考え方の一つですし、尊重されるべきだと思います。

 

ただ、伴侶動物としての小動物はそもそもとして少々不自然な環境であることを思い出してほしいと思います。

オスであれば射精までのプロセスまでが自然における役割ですので身体的に不自然なことはありません。

しかし、メスの場合は妊娠、出産、授乳までを含めて自然で経験すべきプロセスです。これを繁殖学用語で完全生殖周期といいます。

(実際は発情・交配・妊娠・出産・授乳まで)

 

これに対して妊娠せずに発情・偽妊娠しかないものを不完全生殖周期といい、体にとってはストレスにしかなりません。

実際に2回の出産を経験した場合は、出産経験のない同年の動物と比較してメス特集の繁殖疾患にかかる確率が明らかに少ないという報告があります。

 

僕はご家庭に今いる動物を治療・予防対象にすべきと考えていますので、結論としては妊娠させない場合には中性化手術を行うほうが

よりメリットが大きいと思います。

妊娠・出産を経験させる場合、今度は生まれた子供の飼主をどうするか、家で前頭飼えるのか、などの問題も出てきます。

このことに対して対策を持ってから妊娠は計画することが望ましいと思います。

 

以上、大まかですが中性化手術に対する僕の意見とメリット・デメリットについて書かせていただきました。

 

中性化手術をお考えの飼い主様の判断材料になれば幸いです。

 

それではよろしくお願い致します。

 

小野寺動物病院 院長 小野寺史也