歯石とデンタルケアについて

2017年10月16日

今週は秋雨前線がずっと列島にのさばっているらしく、肌寒い上に天気も悪いと来て憂鬱ですね。

院長の小野寺です。おはようございます。

 

今日のブログでは犬・猫の歯石と歯石除去、日頃のケアについて書いてみたいと思います。

よろしくお願いいたします。

 

例によって最初に結論(大事なこと)を書きます。

●犬や猫の歯垢は2から3日で歯石に変わってしまう。

●沈着した歯石は主として物理的な力をかけないと落とすことが難しい

●歯周病など悪さを起こすのは歯茎と歯の間の歯石だけ

自宅では「歯石の付き始め」が起こらないようなケアが重要。

 

ということです。

細かい所を大分端折りましたが今回のブログは長いです。

 

ではでは以下に詳しく書いていきたいと思います。

 

歯石(tartar)とは口の中のミネラルや汚れ、細菌が結合してできた硬性物質のことです。歯石に固まる前の状態を歯垢(plaque)といいます。

人でも沈着する場合があり歯医者さんなどでとってもらうことが多々ありますが、犬や猫は歯垢が歯石に変わる速度が段違いに早いのです。

 

これは口の中のpHが関与しており、人の口内が酸性に傾いているのに対し、犬や猫の口内はアルカリ性に傾いているからです。犬や猫には人にはない頬骨腺という唾液腺があり、ここからアルカリ性唾液が分泌されるからです。

(このため、犬や猫では齲歯、いわゆる虫歯は比較的まれな疾患です)

 

一度くっついてしまった歯石は化学的にガッチリと歯に接着してしまっているため、布やブラシでこすったくらいでは動きもしなければ削れもしません。

小さくする事ができなければ自然と歯石は大きくなるしかありません。

歯石と接触している歯茎では炎症が起こるため(歯肉炎)歯茎は後退し、交代した部分にさらに歯石が沈着します。(歯槽膿漏)

犬や猫の臼歯は多根歯といい、噛む力を集めて高めるため歯茎からほど近い所で歯根が分岐しています。

この分岐部まで歯茎が後退してしまうと口腔内雑菌にとって格好の繁殖場所となり、膿瘍は歯の根元まで届いてしまいます。

歯の根元は歯の石灰質も薄く、また頬骨も薄いためここで強い化膿が起きると目の下の皮膚下に膿が溜まったり皮膚が裂けてしまうこともあります。

また、下顎の歯の場合根っこの化膿がひどくなると骨折の原因にもなります。

 

多根歯ではない単根歯の場合の経過はもっと早く、歯茎の3分の1位が後退すると動揺(押すと動くこと)が始まります。顕著なのが前歯(門歯)で、特に前歯は肩を寄せあって生えているため1本が抜けると次々抜ける傾向が強いです。

 

犬歯の場合は独立して生えているので他の歯からの影響は少ないのですが、歯が大きく歯周ポケットも深いため奥歯と比べて悪くなりにくというものではありません。

犬歯の唇側の歯茎は薄いため退行しやすく、犬歯の根尖部は鼻腔と非常に薄い頭骨で隔たれているのみですので化膿性鼻炎の原因になることが多くあります。(口腔鼻腔瘻)

 

・・・とここまでは「歯石対策をしないと口の中がエライコッチャになりますよー」という内容を書いてみました。

それではエライコッチャにならないためにはどうしたら良いのか書いてみたいと思います。

 

●歯石をつけないためには?

歯の表面に歯石が沈着していない場合、歯石の全段階である歯垢の時点で除去するのが理想です。

この場合最も理にかなった方法は「物理的摩擦」つまり歯磨きです。ただよほど慣れている子でないと歯ブラシを口に入れられることを嫌がりますので指に手ぬぐいを巻いたり、太めの綿棒で「歯磨きじゃないよ、歯茎のマッサージだよー」とこすってあげるのがおすすめです。

もちろん嫌がる場合には諦めましょう。歯磨きが原因で動物に飼主様が嫌われては元も子もありません。

させてくれる子の場合はよる寝る前がタイミングとしてベストです。

歯垢の硬化は唾液の動きが少ない就寝中に起きますので。

 

●歯石がついていない時

満1歳半未満の子のほとんどです。

歯垢の段階で拭ってあげることが最も刺激が少なく、また歯肉炎もないことから痛みがなく、口に手を入れられることに抵抗があまりありません。

この時期から習慣づけて置けると歯の寿命の延長効果が大きく期待できます。

 

●すでに歯石が着いてしまっている場合(軽度)

軽度とは、歯にうっすら色が付いている時期から、歯茎にそって歯石が付いているが歯茎が赤くなっていない時期のことです。

この時点ではできれば早いうちに無麻酔でのハンドスケーリングもしくは歯垢除去剤の使用が勧められます。

ただし色づく程度の場合に鋼性器具で歯の表面をこすると、歯の表面に微細な傷ができてしまい歯石がつきやすくなる可能性があります。

一部が色づき、一部に塊がある場合には塊のみハンドスケーリングで除去すると良いと思います。

 

●歯石が歯茎を押し上げ始めている場合(中程度)

歯石に接している歯茎が周囲よりも赤く、押すと簡単に血が出る場合には、なるべく早急に歯石を除去する必要があります。

今日よりも明日、明日よりも明後日・・・と歯茎は確実に退行していっているからです。

しっかりと全身麻酔をかけて除去すれば歯石除去の効率は最大なのですが、全身麻酔は100%安全であるとは言えません。

ですので当院ではあまり嫌がらない子の場合は無麻酔でのハンドスケーリングを、嫌がってしまう子の場合は鎮静化でのハンドスケーリングを提案する場合が多いです。

(嫌がって器具を噛んでしまう子の場合、歯が負けて割れてしまう危険があるからです)

 

鎮静は血圧・脈拍・処置中の記憶を落とすものですので意識は保っています。そのため鎮静化でのスケーリング時には局所麻酔を併用します。

 

●歯根の分かれ目が見えていたり、歯が動揺している場合(重度)

「エライコッチャ」になっていないのは、今まで運が良かっただけの状態です。

基本的に全身麻酔下での歯の処置(主に抜歯)を提案しますが、嫌がらない子の場合、せめてリスクを少しでも低減させるためにハンドスケーリングを行う場合もあります。ただ、「スケーリングで出来た亀裂が原因で化膿が進む」可能性もあります。

重度の歯周病になっている動物の大半は老齢ですので年齢はどれくらいか・現在口について困っていないか・心臓や他の臓器に基礎疾患はないか、を確認後どのようにすべきかを飼主様と決めていきます。

基本的に僕は動物が痛がっているのかいないのかを主軸に考えますが、麻酔リスクが0でない以上「どうするのが飼主様と動物にベストなのか」を探っていきたいと思います。

 

 

以上、歯について書いてみました。

 

当院でおすすめしている歯石予防、除去アイテムについては後日追記したいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也