歯について(歯垢・歯石・歯周病)

2019年3月12日

やっと風邪が温くなってきましたね。寒いのが大っ嫌いなのであまり外出せずに3ヶ月ほど過ごしている小野寺動物病院院長の小野寺史也です。こんばんは。

今回は動物との生活でどうしてもつきまとってくる歯の問題について書きたいと思います。

いつものように結論を箇条書しますね。

・食肉目である犬猫の歯石沈着の速度は人の5倍以上である。

・歯垢の段階を過ぎた歯石はブラッシングでは除去できない。

・物理による研磨以上に有効な歯石対策は残念ながら存在しない。

・食肉目である犬猫は歯を失ってもあまり困ることはない。

…ということです。

以下に説明を書いていきますねー。

 

人にも歯はありますし、犬猫にも歯はあります。そのためついつい同じ様に考えがちです。しかしここに種別の大きな相違点があります。

人にはものを遮断するための門歯(前歯)、肉を噛み切るための犬歯、あまり硬くないものを砕くための前臼歯、硬いものを噛み砕くための臼歯があります。

このように多種類の歯を持っている理由としては、僕たちの祖先が雑食であることが大きな要因です。果物、木の芽、小動物、木の実など栄養にできる雑多なものを食餌にしていたことが多用途な歯を持つ理由です。特に十分な咀嚼を必要とする硬いものを噛んでいたことで僕たちの口腔には酸に抵抗するためのアルカリを分泌する必要がなくなりました。

 

一方肉食獣である犬猫の主食は肉や骨であり、消化を助けるために人にはない唾液腺を持っています。この唾液腺はアルカリ性であり、犬猫の口腔内をアルカリ性に保っています。酸は物を溶かし、アルカリは物に沈着します。このため犬猫には虫歯ができにくい代わりに速やかに歯石が沈着するのです。

 

近年、動物用フードが食餌の主流となり、犬猫の口腔内環境は劇的に変化しました。炭水化物が主体の食餌をすることで口腔内のpHはあまり変化することが無くなり、歯石の沈着速度が速まったのです。(これは人でも同じことが言え、人の口腔内は基本酸性ですので虫歯が増えました)

特にフードはビスケットやクッキーのような形状ですから一番奥の歯の後ろに留まってしまうのです。犬の舌は人のように器用にできていませんから口の周りを拭うことはできても歯の間にある異物を取ることはできません。(犬猫の舌は薄いですよね?ということは筋肉が少ないということで人ほど自由に舌を動かすことができないのです)

 

ですので歯垢・歯石の沈着を防ぐ最大の手立ては「毎日食べかすを取り除くこと」になります。

 

これがなかなか大変で、特に猫は口腔内が狭いため人の指が入ると違和感が強くなかなか掃除させてくれません。

犬も「ちょ、おい、やめぇや」とばかりに嫌がります。これらの対策として歯磨きになれるために小さな頃から慣れさせることは非常に有用です。

 

しかしもう十分大人のこの場合、やらせてくれない子のほうが多いのではないでしょうか?

そんなときに有用な方法が「食べかすが口腔内に残らない食餌」と「歯垢・歯石除去」です。

 

先に書いたようにビスケットやクッキーのように水が加わると粘土状になる食事が歯石の沈着を助長させます。それならばしっかり飲み込める食餌にすれば必然口腔内に食べかすは残りませんよね?そんな食餌が「肉の給餌」です。噛んでいれば少量の食餌は歯に残りますが、ほとんどの犬猫はおいしい食事は丸呑みします。ゆえに、口腔内に残さずつるっと食べてくれます。そもそも噛まなくても飲み込める大きさに切って与えることができるのですからビスケット状にさえしていなければ問題は少なくなることは道理ですね。

 

そして「溜まってしまった歯石をどうするか」という問題に対しては、

・怒らない子であれば無麻酔で歯石除去をする。当然歯周ポケットも掃除する。

・起こるこの場合、歯石除去の器具を噛むと歯が割れる危険があるため鎮静(意識を奪わない処置、麻酔よりも安全)下で歯石除去をする。

・抜歯の必要があるほど歯周病が進んでいる場合には全身麻酔下で抜歯処置と歯石除去をする。

という方法が対策です。鎮静処置は「動く気が起きないくらいダルいけれど痛みは感じる」状態ですので、痛みをわざわざ与えることは獣医療の精神に反します。

 

口腔内の様子を確認した上で治療方法を提案しますのでよろしければご相談ください。

動物が飼い主様の口を遠慮なく舐められるようにしてあげたいものです。「相手の口を舐める」行為は最大限の親愛の表現方法ですので。

 

よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也