局所麻酔薬の「便利さ」について

2019年6月10日

関東地方の梅雨入りから1週間が経ちました。

「今年は春から高気温が続いていたから空梅雨だろうなぁ」と思っていたのですが連日続く雨…体験談(医学ではミニマムデータベースといい、「昔似たような症例はこれで治った」という類のもの。統計学的には最も信用度が低い)はあてにならないと言われているような気すらします。

5割増で家に引きこもっている小野寺動物病院院長の小野寺史也です。こんばんは。

 

今日のお題は「局所麻酔薬」です。

こう書くとピンとこないかもしれませんが、大抵の方には使用経験があるものです。

歯医者さんにいったときに処置の前に「麻酔しますね~」と言われて注射されるアレ。あれが局所麻酔薬の代表格であるキシロカインです。

2から3時間程度で触覚・痛覚が戻ってくるアレは歯の処置のみでなく多くの麻酔分野にて活用されています。

人医療の分野では「腰椎麻酔」や「硬膜外麻酔」など意識を保ったまま下半身の痛覚を遮断する麻酔手技に用いられます。ただし、この場合は手術手技に時間がかかるためキシロカインよりも麻酔時間が長いブピバカインが用いられます。

 

当院での局所麻酔では「すぐに効いてほしいし、長い時間効いてもほしい」という僕の希望からキシロカインとブピバカインの混合液を使用することが多いです。

 

さて、これらの局所麻酔薬の使用の何が「素晴らしい」かというと

①疼痛を感じさせないことで動物が手術されていることに気づかない。

②局所麻酔薬自体は創(傷)の治癒に悪い影響を及ぼさない。

③神経ブロック(浸潤麻酔)を用いることで、比較的広範囲の疼痛を及ぼす手技も可能になる。

…ということです。

 

体表の腫瘤(イボ)を取るために全身麻酔をする…と獣医師に言われたときに皆さんはどう感じるでしょうか。

「全身麻酔が必要なほど大事なんだ」「全身麻酔は死んでしまうようなイメージがあって怖いな」「そこまでしなければいけないような病気なのかな?」

…と、感じることは様々だと思いますが、多くの場合そのイメージは「良くないもの」ではないでしょうか。

そのイメージは間違っていません。麻酔手技のリスクは全身麻酔>鎮静>局所麻酔の順で高いからです。

 

一方獣医師(僕)の方の都合を考えてみると、極力リスクが少なくベネフィット(利益)が高い治療方法を提案しているつもりです。なぜなら麻酔事故など起こしたくありませんし、手術失技も起こしたくありませんし、噛まれたりもしたくないからです。

 

ですので当院では局所麻酔で可能な手技は局所麻酔で、鎮静が必要な場合は鎮静を併用して、どうしても全身麻酔が必要な場合は全身麻酔を用いて手術を行います。全身麻酔を用いなければ動物がどうしても痛みを感じたり、動いてしまうことで事故の原因になったりする場合には提案するようにしています。

 

少し話が逸れてしまいましたが今回のブログで強調したいことは③の浸潤麻酔を用いれば断指、断尾、ある程度深い部位の腫瘤摘除は痛みなく行うことが可能だということです。もちろん保定者の腕の中にいるわけですからノーストレスというわけには行きませんが、パニックになったり過剰に恐怖を感じる気質でなければ局所麻酔で行えることは多くあります。

全身麻酔のリスクを考慮することで治療を諦めてしまうような事柄がありましたら、一度ご相談いただけると意外とアッサリ解決できることもあるかもしれません。

 

よろしければご相談ください。

 

「こんななんだけどどう思います?」的な質問がありましたら当ホームページのお問い合わせ欄からご相談ください。

 

よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也

経口ノミ・ダニ駆除薬の特徴について。

2019年5月29日

散発的にマダニやノミを見かける時期になってきました。

 

暖かかったり、ぬるかったり、肌寒かったり…

かと思えば北海道で40℃近かったりと妙な天気に翻弄されている小野寺動物病院院長の小野寺史也です。こんばんは。

 

さて皆さん、ノミ・ダニ予防はされていますか?

幾度か書いていますが僕はフィラリア予防は動物の環境に合わせて処方をし、ノミダニ予防は強く勧める方針です。

 

最近、経口薬のフィラリア・ノミ・マダニ駆虫薬を取り扱っているかのご質問を多くいただきます。

簡潔にお答えすると経口ノミ・ダニ駆虫薬を取り扱うつもりはありません。

理由は以下に書きますが、簡単に書きますと動物を吸血させてほしくないからです。

ノミ・ダニ駆虫薬には大別して「経口駆虫薬」と「スポットオン駆虫忌避薬」があります。

近年、経口駆虫薬ではフィラリアに加えノミ・マダニの駆虫も可能な製剤が発売されています。

定期的に内服するだけなので簡便で、フレーバー錠のため嗜好性も高いです。スポットオンの薬剤と違い動物が舐めて起きる事故もほぼありませんし、揮発した石油類によって目がしみたり、肌への刺激もありません。

メリットが多く見られますが、意外と肝心なところが認識されていません。それは

「刺されないと駆除されない」

ということです。

ノミやダニは確かに駆除されるのですがそのためには吸血されないといけません。

 

無断でリンクを張ってしまいますが動画で様子を確認できるサイトを張っておきます。↓

https://www.bayer-pet.jp/pet/products/fortreon.html

 

理想は蚊にもノミにもダニにも刺されないことだと思います。

その点、スポットオン製剤は忌避効果(体に取り付いた虫が吸血せずに逃げ出す、もしくは吸血する前に駆除される)があるため「吸血させない」という目的に合致します。

ただ、スポットオン製剤は皮膚刺激性があるため中には皮膚炎を起こす個体もいます。

そのため当院では肌の刺激性が弱いスポットオン製剤をお勧めしています。

 

よろしければご相談ください。

 

よろしくお願いいたします。

小野寺動物病院 小野寺史也

狂犬病予防接種についてと予約枠不足について

2019年4月21日

昼は暖かく、夜は肌寒い程度、という1年で最も過ごしやすい気候にやっとなってきました。

夏は暑いからと外に出ず、冬も寒いからと外に出ない生活をしている僕が少々活動的になる時期です。

小野寺動物病院院長の小野寺史也です。こんにちは。

 

現在狂犬病ワクチン接種の法定期間真っ只中ということで、当院でも連日ワクチン接種を複数行っています。

当院ではワクチンの特性と危険性を考慮して、ワクチン接種は午前中に行うことを推奨しています。

このため午前中の予約枠のほぼ全てが狂犬病ワクチン接種・寄生虫予防の予約で一杯になり、ご予約が受けづらい状況になってしまっていることを大変申し訳なく思っています。

特に新規の飼い主様において午前中を希望されるとすでに5月後半まで枠がないためお待たせしてしまう状況です。1ヶ月様子が見られるような病態であれば良いのですが、急性で強い症状(元気や食欲に影響が出るくらいの症状が突然現れた場合)が出た場合に治療できないことは全くもって僕にとって不本意です。お待ちいただくことをご了承いただければ必ずしっかりと診察いたしますのでご連絡の上ご来院ください。なお、ワクチン接種の予約が集中しない午後であれば診察可能な場合は多くあります。

 

急性アレルギーであるアナフィラキシーショックなどはワクチン接種後15分以内に起きるものですので院内にて20分待機していただいていますが、遅延型アレルギーはワクチン接種後4時間から48時間以内に起こります。このうちの殆どは4時間から8時間で起こりますので起きた際に詳細を知っている病院(この場合は当院)が対処することが望ましいと考えています。

「遅い時間にワクチンを接種するけれど、副作用が出たら開いている病院を訪ねてください」ということは本意でないため午前中と午後の極めて早い時間以外のワクチン接種を僕は推奨しません。そもそもワクチンという予防治療を「ある限定期間中」に接種しなければいけないということは、ワクチンの特性に即していないと言えるかと思います。

飼い主さんが無理なくワクチン接種を動物に受けさせられて、十分様子の観察ができる日に接種することが動物主体の観点から見れば望ましいかと思います。

 

しかし、狂犬病ワクチンに関しては少し事情が違います。4月1日から5月31日までの期間が法律で定められている狂犬病ワクチン接種期間だからです。

ただしこの期間を少々外れても、年度内にワクチン接種を行えば格別大きな問題にはなりません。

東京都であれば、例えば年度内にワクチン接種を行っていない状態で人や他の動物に咬傷事故を負わせた場合、週に1回計3回、動物病院にて「狂犬病に罹患している兆候がない」証明書を獲得する必要が出てしまいます。

また、登録を行っていない動物の場合には即時抑留、もしくは予防員や捕獲人により確保される可能性があることを留意していなくてはいけません。

ただし、何らかの継続的な治療を受けていたり体調不良がある場合などには「狂犬病予防接種猶予証明書」をお渡しすることが可能です。この証明書は本年度の予防接種を接種したことにできるような力のある証明書ではなく「今年の指定期間に予防接種を受けなかったことには理由があるから秋の督促状を送る必要はありませんよ」というものです。必要がありましたら即時無料で発行しますのでご相談ください。

 

まとめてみるとこんな感じです。

1.当院の予約がとりにくい状態については僕の不徳の致すところです。可能であれば集団接種にて接種していただき、都合が合わない場合には当院での接種をお考えください。

2.4月から6月までの法定接種時期を外れることは望ましくないですが、事情がお有りならば時期を外れた場合でも狂犬病ワクチン接種は可能です。

3.ワクチン接種はすべからく、様子を確認できて、病院が対応できる時間帯に接種することが望ましいと思います。

4.継続的な治療を受けていたり体調不良がある場合などには「狂犬病予防接種猶予証明書」をお渡しすることが可能。ただし秋の督促状が不要である旨を通知するものであり接種したかわりにはなり得ません。必要がありましたら即時無料で発行します。

5.狂犬病ワクチンを行わず、登録を行わない行為は「動物が暫くの間、見知らぬ場所で、狭いケージに入れられ、可愛がられもせず、フード単独の食餌で飼育される状況」を起こしかねない行為です。「動物が幸せで長生きできる環境を作る手伝いをする」ことが臨床獣医師の使命と思っている僕には到底容認できかねますのでワンコが未登録の場合には来院時毎回注意します。

 

といったところでしょうか。

 

疑問点などがありましたらメールにて当院までご質問いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也

 

 

4月30日(火)、5月1日(水)臨時休診いたします。

2019年3月27日

お薬の処方時にゴールデンウィークの事を考えなければならない頃になってきました。

今年は異例の10連休ということで…喜ぶ方々や喜べない方々が別れていそうですね。

こんにちは、小野寺動物病院院長の小野寺史也です。

当院は日曜祝日でも午前中の診察は行っています。ですが今年のゴールデンウィークは長すぎるということで

途中に臨時休診をいただくこととしました。当院の本来の休診日は木曜日ですので4月30日、5月1日、5月2日が休診となります。

継続的にお薬を内服されている飼い主様におかれましては、期間中にお薬が切れないようご確認をお願いいたします。

 

具体的には

4/27(土曜日)…午前・午後診療

4/28(日曜日)…午前診療

4/29(昭和の日)…午前診療

4/30(退位の日)…終日休診

5/1(即位の日)…終日休診

5/2(なぜか休日)…終日休診

5/3(憲法記念日)…午前診療

5/4(みどりの日)…午前診療

5/5(こどもの日)…午前診療

5/6(振替休日)…午前診療

 

ということになります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。

 

小野寺動物病院 小野寺史也

フィラリアについて

2019年3月21日

Googleさんは週に1回「投稿するといいことあるんじゃない?ん?」という趣旨のメールを送ってきます。

そのメールを確認した僕は基本的に以前の投稿を再投稿するのですが、今回は時期が時期ですのでフィラリアについて書いてみました。

すると再びGoogleさんから「今回の投稿大好評だからもっと投稿してみたら?ん?」というメールが届きました。

 

まぁ追加の投稿はしないんですがGoogleさんが多くの人が見ているみたいだよというお墨付きをくれましたのでブログにも転載&補足してみたいと思います。

いつもどおりに要点を先に書きます。

・都内23区内は緑も少なく、屋外飼育されている犬もほぼいないことからフィラリアに重篤感染する可能性は低い。

・フィラリアは「感染すると命にかかわる」ようなマラリアなどとは違い、感染数に応じて危険度が変わる。

・東京都外によく行く子・ドッグランなどの不特定多数の犬のいる場に行く子・川沿いを好んで散歩する子には予防を考えても良い。

といったところです。

 

以下が転載です。具体的には「蚊がどれほどのハードルを超えてフィラリアを感染させるに至るのか」について書いたつもりです。

そろそろノミダニ予防、フィラリア予防の時期ですね。診察時にもフィラリアの説明をする機会が増えてまいりました。ちょうどいいのでフィラリアの生態について書いてみたいと思います。
まず、まんまと犬科動物の心臓で出会ったフィラリアのオスメスは交尾をし、子供であるミクロフィラリアを生みます。ミクロフィラリアは血液中を流されながら生き続け、たまたま蚊に吸血されたものは数度脱皮をして感染仔虫になります。2週間程かかります。感染仔虫になった虫は蚊の吻鞘というところで感染の機会を伺います。その蚊がまた犬を刺した際に針穴近くに落下した仔虫は自力で体内に入り込みそのまま3ヶ月ほど成長します。その間に何度か脱皮するのですがこの脱皮段階が早い場合にいわゆる「フィラリア症予防薬」という駆虫薬が効きます。
3ヶ月ほど成長した成虫は血流に乗って心臓の右心房に留まり、またオスメスが出会って交尾できれば仔であるミクロフィラリアを生みます。当然ですがオスのみ、メスのみしかいない場合にはミクロフィラリアは生まれません。ただしメスの場合はフィラリア抗体検査に引っかかる量の交代を犬の体が産生します。これがフィラリアの生活環(ライフサイクル)です。

では現代の東京の生活を見直してみましょう。
・屋内で生活する犬は蚊に刺される機会が少ない。(蚊の生活半径は半径10m程。基本的に水場を離れない)
・屋外で生活していない以上、同じ蚊(たまたまフィラリア陽性の犬を刺し、感染能力のある仔虫を持った蚊)に再び刺されることはもっと少ない。
・そもそもフィラリア陽性の犬が極端に少ないため、吸血しに来た蚊がフィラリア感染仔虫を持っている可能性は低い。
・犬の血を使って産卵しようと考えている蚊は人の血でも産卵できるため、動きの少ない毛のない動物を狙う傾向にある。

ということで、フィラリアに罹る可能性自体が少ない上に重篤な状態になる素地(同じ蚊に何度も刺される屋外生活をしていない)のない動物に予防する意義は僕は高いとは感じません。

「検査はするけど予防はしない」という選択肢を犬との生活に取り入れるか検討してみてはいかがでしょうか?ただし、頻繁に都外に外出したり、ドッグランのように不特定多数の動物のいる地域に行く生活をしている子には予防すべきと考えています。
生活スタイルを教えていただければ最適だと僕が考える駆虫スタイルを提案させていただきます。

よろしければご相談ください。

 

小野寺動物病院 小野寺史也